電動ガン用バッテリーのおはなし | Workshop Diary

電動ガン用バッテリーのおはなし

2009年03月21日

本日はちょっと趣向を変えて、バッテリーのお話です。と言っても、ニッケル水素ミニバッテリー限定になりますが。ニッカド時代に比べると最近のニッケル水素ミニバッテリーは夢の様な性能に進化しました。その反面、お客様からは「1,2回しか使っていないのに死んでしまった」、「放電してから充電しても300mA前後しか入らない」等の声も多数お聞きします。以前からニッケル水素ミニバッテリーに関しては一度、しっかりと説明したいと思っておりましたが、いかんせんしっかりと説明しようとすると本が2,3冊出来上がる位の量になってしまいますので、要点をまとめるのに苦労していました。という事で今回は必要以上に深く掘り下げずに、要点のみに絞ってお話します。(何だか受験前用の参考書みたいなコメントですね(笑)それでもかなり長くなってしまいましたが最後までお付き合い下さいませ。

ーニッケル水素ミニバッテリーについてのおはなしー

・最近のニッケル水素ミニバッテリーはニッカド時代では考えられない程の大容量&高出力化の一途を辿っています。ニッカド時代のミニバッテリーの容量は600mA~700mAが限界でしたがニッケル水素のミニバッテリーでは現在1600mAまで向上しています。出力に関してもニッケル水素8.4V/1600mAミニバッテリーの出力は、もはやニッカド時代の9.6Vミニバッテリーと同等程度まで向上しています。しかしながら、大きさはニッカド時代とほぼ変わらないミニバッテリーサイズ(2/3Aセル)という制約がある中での大容量&高出力化ですので、高性能化と引き換えに性能を引き出す為の使用方法や高性能を維持する為の管理方法にはシビアさが求められるのも事実です。また適切な扱い方をしていても、ニッカド程の高寿命は望めないのが現状です。これは各社バッテリーメーカー間の競争が過激になり、安全マージンを多少削ってでも容量&出力を稼いだ結果です。もちろん我々ユーザーのとどまることの無い、高性能化を求める声もその事態に拍車をかけました。ニッケル水素のミニバッテリーと上手に付き合っていくには、まずはこの点をしっかりと認識しておく事が重要です。電動ガンをカスタムしていく上で高性能バッテリーは必要不可欠な存在です。どんなに効率の良いメカBOXを組上げたとしても、バッテリーの性能が低ければ本来の作動性能は到底望めません。当店は電動ガン専門のカスタムプロショップですのでバッテリーに関しては、常日頃から様々なテストを行ってきましたし、ノウハウに関しても一般的なショップさんよりかは精通していると思います。今回ご紹介する内容はあくまでも当店が独断と偏見と過去の経験から「一般的な電動ガンユーザーがニッケル水素ミニバッテリーを電動ガンに使用する場合」に於いての内容です。下記の方法を実践したからといって100%性能が保障されるものではありませんが、少なくとも現在、間違った取り扱いをされている方には参考になるかと思います。

★充電方法について;充電電流は1A(アンペア)をお勧めします。充電池の充電電流を決める際に良く用いられる「1C充電」(例えば4200mAであれば4、2A、1600mAであれば1,6Aという具合です。この「1C充電」という方法は何Aで充電して良いのか分からない時はとりあえず「1C」で充電しておけば問題ないですよ、というものでRC業界等では古くから用いられている手法です。)という方法がありますが、ミニバッテリー(2/3Aセル)の場合は熱を持ちすぎますのでお勧め出来ません。但し、ラージバッテリー(SUB-Cセル)の場合、この「1C充電」で問題ありません。1Aでの充電ですのでそれなりに時間は掛かりますが、時間を急ぐあまりにバッテリーを壊しては本末転倒ですので、ここは焦らずに優しく充電してあげて下さい。(※デルタピーク感度を調整できる充電器の場合、まずは一番浅い値からスタートして下さい。ゼロデルタピークでも構いません。もし途中でカットされてしまう場合は少しずつ感度を深くしていって下さい。但し1セル当たり4mV以上は深く設定しない方が賢明です。)

★放電方法について;放電に関しては諸説ありますが、「一般的な電動ガンユーザーがニッケル水素ミニバッテリーを電動ガンに使用する場合」に於いては、放電は行わない方が賢明である、と当店は考えます。もちろんニッケル水素バッテリーにもメモリー効果は確実に存在しますので厳密に言えば放電は行った方が良いでしょう。但し、適切な放電作業を行える環境&知識があれば、というのが大前提になります。電動ガンに使用するバッテリーは余程のバッテリーマニアでもない限り、パックバッテリーです。これはセル同士をスポット溶接で接続し、熱収縮チューブでパック形状にした最も一般的なバッテリーです。チューブで覆われていますのでショートの危険性も低く取り扱いが容易なのが長所ですがその反面、一つ一つのセルでの個別の充電/放電は出来ず、あくまでもパック全体での充電/放電になります。対して、バッテリー性能が勝敗に直結するようなRC業界ではバラセルバッテリーという形状が一般的です。これは一つ一つのセルが剥き出しで各セル同士を専用のバッテリーバーでハンダ接続したバッテリーです。もちろん+、-の電極も剥き出しですのでショートの危険性もあり、扱いには細心の注意が必要になりますがその反面、一つ一つのセルを個別に充電/放電する事が可能になります。当店がパック形状のニッケル水素ミニバッテリーの放電を一般的な電動ガンユーザーの方達へお勧めしない理由はここにあります。ニッケル水素バッテリーの注意点の一つに、「過放電に非常に弱い」という点があります。具体的には1セル当たり0.9V~1V以下まで放電してしまうと過放電によりバッテリーが死んでしまう可能性が高くなります。更に言えばこの値は比較的、電圧復帰が早いSUB-Cセルでの値ですので電圧復帰能力が劣る2/3Aセルの場合は1セル当たり1.1V程度が限界ではないでしょうか。ここで問題になるのがパックバッテリーの場合、一つ一つのセルを個別に放電する(単セル放電)事は出来ない、という点です。バラセルバッテリーの場合、専用の単セル放電器を使い放電終了電圧を1セル当たり1.1Vに設定すればそれぞれのセルをきちんと1.1Vまで放電したところで終了してくれます。これは各セルの電極が剥き出しの為、全てのセルに対して個別に放電器を接続する事が出来るからです。一方、パックバッテリーの場合、あくまでもパック全体での放電(パック放電)になります。例えば放電器の終了電圧を1セル当たり1.1Vに設定したと仮定します。(※本来、パック放電の時点で「1セル当たり~V」という考え方はおかしいのですが、分かりやすくする為にあえて、そのように仮定します)その場合、放電器は各セルがそれぞれ1.1Vになった時点で放電を終了してくれるのでしょうか?答えはNOです。各セルに対して個別に放電器を接続する事が出来ないパック放電の場合、放電器はあくまでもパック全体の電圧でしか判断出来ません。つまり8.4Vバッテリー(7セル)であれば、単純にパック全体の電圧が7.7V(1.1Vx7セル=7.7V)になった時点で終了するだけです。7セル(8.4V)それぞれが何Vになっているのかは一切考慮されません。そしてこのパック放電の問題点は1.1V以下まで放電されてしまうセルが発生する可能性が極めて高い、という点です。例えば7セル(8.4V)にそれぞれA,B、C、D、E、F、Gと名前を付けます。以下はパック放電で7.7V時点での各セルの電圧です。

パターン①A;1.1V、B;1.1V、C;1.1V、D;1.1V、E;1.1V、F;1.1V、G;1.1V=合計7.7Vです。でも……
パターン②A;1.3V、B;0.9V、C;0.8V、D;1.4V、E;1.2V、F;1.0V、G;1.1V=これも合計は同じ7.7Vです。もちろんパック放電器の場合①、②共に同じ7.7Vと判断してしまいます。ちなみに余程高価なマッチドバッテリーでもない限りは各セルの性能差にはバラツキがありますのでパターン②の方が現実的です。この場合、B、C、Fに関しては既に1.1V以下まで放電されてしまいますので所謂、過放電となってしまいます。
このような理由から、「一般的な電動ガンユーザーがニッケル水素ミニバッテリーを電動ガンに使用する場合」に於いては、放電は行わない方が賢明である、と当店では考えています。
もちろん、「バラセルバッテリー」を使っていて放電終了電圧を指定出来る「単セル放電器」をお持ちの場合は放電してもらってOKですが。

★ 保管方法について;昨今の高出力ニッケル水素バッテリーは非常に自然放電が早い傾向があります。保管前に充電しておくと、自然放電による過放電を防ぐ事が出来ます。もし1ヶ月以上間隔が空く場合は2週間に一度充電しておいた方が良いでしょう。同様の理由により、ニッケル水素バッテリーは極力、使用直前に充電するのがポイントです。ニッカドの場合、2,3日前に充電しても体感出来る程の性能低下はありませんでしたが、ニッケル水素の場合、2,3日前に充電したバッテリーと直前に充電したバッテリーとでは体感出来る程の違いがあります。またニッケル水素の特徴として温度に対して非常に敏感、という点があります。具体的には使用時にバッテリーが冷たいと本来の性能が発揮出来ません。冬場等で外気温が低い時などは使用前にカイロ等でバッテリーを温めておくだけでも、かなり効果がありますのでお試し下さい。
かなり長くなってしまいましたので簡単に要点をまとめると
・ 充電は1A
・ 放電はしない
・ 充電してから保管する
・ 使用直前の充電が理想的
・ 冬場等は使用前にバッテリーをカイロ等で温める
と、なります。上記の作業を行う事で100%ではありませんが、破損の確率はかなり低下すると思いますのでご参考下さい。

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一般的なパックバッテリーです。※写真はラージバッテリー

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バラセルバッテリーです。※写真はラージバッテリー

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一般的なパックバッテリー用の放電器です。終了電圧はあくまでもパック全体での数値でしか判断出来ません。

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バラセルバッテリー用の単セル放電器です。終了電圧は各セルそれぞれを個別に判断出来ます。

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