FMC MRP オーバーホール作業 | Workshop Diary

FMC MRP オーバーホール作業

2011年11月23日

1.JPG本日はBEST GUN製LMT MRPのオーバーホール作業です。
「個人売買でBe-MAXのコンプリートを中古で購入したが、なんだか調子がイマイチなので一度、点検して欲しい」という事でお持込になられました。どうやら今回のお客様の手に渡るまでの間に色々と内部を分解されて本来の性能が出ていないようです。まずは早速、作動点検をしたところ、発射後に「ビヨヨ~~ン」とバネ鳴きの音が聞こえてきます。
とりあえず初速を計測すると、驚きの43m/s(0.2gBB弾)という値が表示されます。


2.JPGメカBOXを分解したところ、案の上、メインスプリングが交換されていました。初速を下げたくて行ったのか、その真意の程は不明ですが思いっきり「ブツ切り」のスプリングが組まれています。海外製の箱出し電動ガンでも頻繁に見受けられますが、ここまで短くカットしてしまうとメカBOXにセットした際にテンションが不足して確実にトラブル(主に駆動系の破損)が発生します。更にピストンが前進しきった際にもピストンのリバウンドを押さえつけるテンションが足りない為、「ビヨヨ~ン」とスプリングが踊ってしまい共鳴音(バネ鳴き)が出ます。(※この辺りの詳しいお話はこちらを参照下さい)


3.JPG

4.JPG写真では分かりずらいのですが、カットされていたスプリングは内径が若干大きく、端面の処理もされていないのでスプリングガイドのスラストベアリングから3分の1程、ハミ出ていました。(私はこの現象を勝手にスプリングがズッコケる、と呼んでいますが同じような呼び方をしている方に会った事がありません。他の方は何て呼んでいるんだろう…)
おそらくはあと少しズッコケていたら、スプリング圧縮時にピストンを最後端でロックさせてしまい、駆動系全損になっていたと思います。この点だけに関して言えばスプリングをカットした事でテンションが弱くなり、ズッコケまで至らなかったのかも知れません。
スプリング(特に内径)とスプリングガイドとの相性は意外と見過ごされていますが、実はかなり重要です。一見、どれも同じように見えるスプリングですがメーカーやスプリングテンションが変われば外径、内径の寸法はそれぞれ違ってきます。
そしてそこに組み合わされるスプリングガイド側もややこしい事にメーカーによって寸法(中心の軸径、スラストベアリングの大きさ等)は様々です。更に言えば、今度はピストン内径とスプリング外径も絡んできますので…、複雑な三角関係の出来上がりです(笑)
相手側の寸法がこれだけ多種多様ですので「これ1本で全部OK!」というスプリングは存在しないと考えています。
という事で当店では色々な寸法のスプリングをバネ屋さんに製作してもらって、その時の相手側の寸法に最適なスプリングを使用しています。


5.JPGカットされたスプリングが組まれていた事で初速が低くなるのは理解出来るのですが、それにしても43m/sは低すぎなのでまだまだ、原因はありそうです。
色々と調べていく過程でピストンを勢い良く前進させても全く圧縮が無い事に気付きました。どうやらOリングも交換されていたようですが線径が細く、前進時にシリンダーに密着出来ず、スカスカでした。最近はピストンヘッド用Oリングも単品でカスタムパーツとして、販売されているようですが、スプリング同様にやっぱり相性があります。簡単なチェック方法はOリングにシリンダーを「パカッ」と被せてそのまま上に持ち上げます。この時にシリンダーにくっ付いてこないOリングはとりあえず使わない方が賢明かと思います。
初速は大幅に下がる可能性が高いですし、最悪メカBOXが割れます。(Oリングがシリンダー内面に密着出来ず圧縮が掛からない、という事は空撃ちに近い状態です)ピストンヘッド前面に穴が開いているタイプは前進時にOリングが広がる事で必要な時にだけシリンダーに密着する構造ですが、さすがにここまで隙間があると多少広がった位では密着出来ません、モノゴトには限度ってものがあります(笑)
6.JPGという事でOリングも交換となりました。ホンの少しの寸法修正であれば柄の太いドライバー等に通して1晩置いておくと修正出来る場合もありますが今回は、その範疇を越えていたのでこの裏技は使いませんでした。
7.JPG
8.JPG今回の作業は「オーバーホール作業」という事で承っていますので最後はいつものRC用ベアリングオイルをベアリング軸受けに注油します。お客様の手に渡った後は頻繁に注油出来る部分ではないので、オーバーホール作業の際は必ず行います。
初速も正常な状態(約95m/s)まで復活しましたので作業完了となりました。
今回の様に「中古で購入したが中身の状態が知りたい」や「これが正しい状態なのか確認したい」といった場合はお気軽にご相談下さい。各種FMCシリーズに関しては最初の段階でしっかりと内部に手を加えて仕上げてありますので、定期的なメンテナンスだけで末永くお使い頂けると思います。

KEN

Be-MAX japan