ARES製 DSR-1 カスタム作業 | Workshop Diary

ARES製 DSR-1 カスタム作業

2013年06月23日

dsr.jpg本コーナーでは2回目の登場となるARES製DSR-1です。前回「工房ダイアリー」で取り上げてから約3年程経過しましたが、その後も多くのDSR-1の作業を行わせて頂きました。その中で新たに判明したトラブル箇所や仕様変更等がありましたので、この度、改めて本コーナーで取り上げる事となりました。

まずはDSR-1(というよりもARES製ガスボルトライフル全般で)と言えば「箱出しの状態だと冗談みたいな初速の低さ」が有名ですが、この点に関しては、どの個体も同様です。個体差もありますが40m/s代も珍しくはありません(泣)外気温の変化に敏感な「ガスガン」という事で、インポーターさん側で、かなりの安全マージンを取ったデチューンを施している為と思われます。(個人的には安全マージン取りすぎでしょ!と思いますが)ここからが本題で、上記の初速を故意的に下げる行為(デチューン)の内容が何通りか存在しています。最も多いのは前回の作業でも取り上げました 1;マガジン側のガス放出口の内径を細くする。という内容です。放出口の内径を細くする事でガスの流量を少なくします。

2.JPGこの方法以外で当店で把握している内容としては 2;ハンマースプリングのカット。放出バルブの打撃力を弱め、ガスの流量を少なくします。

3;マガジンキャッチの形状を変更し、マガジンをグラグラの状態にする。これは、マガジンキャッチを変更して、マガジンをグラグラの状態でセットする事で、マガジンとボルト(マガジン側からガスが流れ込むパーツ)を故意的に密着しないようにしています。本来はマガジンのガス放出口とボルトのガス流入口は密着していますが、この部分に隙間が出来るとガスが漏れるので初速が下がる、という何とも「非効率」的な方法です…。あまりの驚きで写真を撮り忘れてしまいましたが、例えて言うとガスハンドガンのマガジンがしっかりと挿入されていない事をイメージして頂ければ近いかと。通常、そんな事をしたら本体側のバルブノッカーとマガジン側の放出バルブ(背面)の位置が合わないので、バルブが叩けなくなりますが「タナカ方式」の場合、マガジン上面からバルブを叩く構造なので、多少隙間があっても叩けちゃうんですよね…。但し、何とかバルブは叩けたとしても、マガジンリップとローディングノズルの位置関係がズレるので、給弾不良が頻発します。当店では多くのデチューンされた本体を見させて頂いていますが、往々にして「正常作動するか、しないかは二の次で、とにかく初速が下がれば(その場しのぎであっても)オッケー!」的なところが見受けられます。規制値内への調整は当然必要です、しかしだからと言って、その本体が正常作動しなければ本末転倒なわけで…。(そもそも「初速を調整」した事で正常作動しなくなったら、それは「調整」じゃないですからね)あとは同じような内容で、マガジン放出口の「上方向への突き出し量」が不足して、ボルト側と密着しない物もありました。放出口は上下方向にスライドする構造になっています。通常はスプリングテンションにより上側に突き出しています。こうする事でボルト側との密着度を上げているのですが(且つ、コッキングの際にボルトが回転する時には放出口が下がる事で「逃げ」になる)、「上方向への突き出し量」が足りず、ボルトとの隙間からガスが漏れてしまいます。この場合は放出口パーツの外周リブを薄く削る事で上方向への突き出し量が増えます。個体差もありますが、リブを全て切除しても最終的には、その下の「Oリング」がストッパーの役割をしてくれますので、突き出し量が増えすぎて弊害が発生する事はありませんでした。どのデチューン方法であっても、それぞれで対策は可能です。しかし一番やっかいなのは「3」のマガジンキャッチでのデチューンですね。マガジンキャッチ自体の形状を変更しないと解決しませんし、加工の際に万が一破損してしまうと、パーツの入手がかなり困難なので極力、やりたくない作業です(笑)デチューンとは違うお話ですがインナーバレルも初期は「電動ガン規格」だった物が途中から「VSR規格」に変更になっているようです。チャンバーパッキンも当然、変わってきますので、ご自分でカスタムされる方は、分解してどちらのタイプかを確認してからパーツを購入された方が良いかと思います。ちなみにDSR-1の場合、インナーバレル交換はほぼ「全バラ」が必要ですので、それなりに覚悟して下さいね。軽い気持ちで挑むと返り討ちにあいます。

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本体には標準でマガジンが2本付属しています、このマガジンが曲者で上記のデチューン内容との絡みもあり、「こっちのマガジンだと調子が良いが、もう一つのマガジンだと調子が悪い」という事が多々あります。マガジンによる性能差は施されているデチューン内容のバラツキが原因の場合もありますが、それだけではありません。
過去、当店で全くの同条件に仕上げたマガジンでも、初速に大きな差が出る場合がありました。放出口の内径、突き出し量、マガジンキャッチの掛かる位置、等はピッタシと揃っているにも関わらずです。何度も寸法を確認しましたが、かなりの精度で揃っています。そうすると考えられるのは「放出バルブ」です。という事でいつもの専用工具でバルブ関係を取り外します。

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取り外した放出バルブをよ~く観察すると、何点か原因らしき箇所が判明しました。
ひとつは、バルブのストローク量が違う事。
写真だと分かりずらいと思いますが(深夜に作業していた為、撮影者&持ち手が私一人だったので…)2つのバルブでストロークが違うのがお分かりでしょうか?ちなみに両方とも最大までバルブは押し込んだ状態です。右側のバルブに比べて左側のバルブの方がストロークが短いのが確認出来ます。つまり、「放出量が違うバルブが組み込まれているので、そりゃ初速も違うよね」という事です(笑)
バルブを分解し確認したところ、ストロークを決定する部分の寸法そのものが違うので、ロットによるバラツキなのかもしれません。

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10.JPGという事でストロークが不足していた方の内部パーツを削り、ストロークを揃えたところ案の定、マガジンによる初速のバラツキは大幅に軽減されました。本体付属の2本のマガジンで、それぞれ違うバルブが組み込まれている、という国内製品ではまず、考えられない事が海外製品では起こります。海外製品の手直し作業を行う場合のポイントはズバリ「全てを疑う」、これに尽きますね(笑)

その点以外だとバルブの叩かれる部分(銀色)が曲がって組まれている物もあります。突き出している銀色の部品がビミュ~~に曲がっているのがお分かりでしょうか。

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13.JPG当初、シャフトが曲がっているのかなと考えましたが、銀色の部品のネジ山が真っ直ぐに切られていない為、曲がって入ってしまうようです。ここが曲がってしまうと、バルブボディ側とのクリアランスが狭くなり、スムーズに上下しなくなります。この部分もネジ山を修正して真っ直ぐにネジこまれるように修正しました。

番外編として、ガス漏れ修理の為にバックプレートを開けたところ、内部から正体不明の「何か」が出てきました。最初見た時は「ギャー!人の爪が出てきた」とかなりビビリましたが、その後、他のマガジンでも同じ物が出てきたので「爪」ではないようです。
じゃ、一体こいつは何なのかというと不明です。
ロストワックスの蝋でもなさそうですし…、もしかするとロックタイト(ネジの緩み止め材)の残りがガス圧によって、内壁に押し付けられて固まったのかもしれませんが、正確なところは分かりません。どちらにしてもガスタンク内で、こいつがウロチョロしてるのは、何だか気持ち悪い(破片が更に細かく割れた場合、最終的には銃口から飛ぶ事もあり得ますし)ので、当店で作業する際に見つけた場合はゴミ箱へポイしてます。

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以上のように、シンプルな構造のガスボルトライフルなので、そんなに大変な作業は無いでしょう、という甘い考えは見事に打ち砕かれるDSR-1でした。
そうは言っても国産メーカーではラインナップに無い機種で存在感も抜群ですし、実射性能の低ささえ、改善出来れば一生モノの価値はある機種です。
インナーバレル、チャンバーパッキンは「電動ガン規格」にしろ「VSR規格」にしろ、基本設計の優秀さは十分に実証されているパーツが使えますので、しっかりと手を加えてあげれば見違える程の実射性能に生まれ変わります。
お持ちのDSR-1の実射性能に納得が行かない、という方はお気軽にお問い合わせ下さい。

KEN

Be-MAX japan