バイオBB弾に関して
ご無沙汰しております。
殺人的な忙しさ(大変有り難い事です)でなかなか更新出来ませんでした。本日は若干趣向を変えて「バイオBB弾」に関してのお話です。最近、安価なバイオBB弾が原因によるトラブル(弾詰まりによる駆動系パーツ破損、給弾不良、弾道不良)が多発しています。今も昔も故障原因の第一位は「不良BB弾による弾詰まり」ですが、昔と違い現在は様々な安価なバイオ弾が販売されています。これらの中には「BB弾の様な形をした丸い物体」も見受けられます。当店には弾詰まりによる修理品も多数持ち込まれますが、「安価なバイオ弾」が原因である事がほとんどです。もちろん安価なバイオ弾の全てが弾詰まりを起こす訳では無いと思いますし、銃本体との相性(マガジン、インナーバレル、チャンバーパッキン等含めて)もあります。あくまでも当店の独断と偏見と過去の経験からのお話になります事を予めご了承下さい。
・まずは最新の弾詰まり事情(笑)からご説明させて頂きます。一昔前(バイオ弾が主流になる以前)は弾が詰まる不良BB弾=直径がバラついていて径が大きい、でしたのである意味、判別は容易でした。パーティングライン(PL)が思いっきり残っていて土星の様な弾やPLから半分ズレている弾等、見ればすぐに分かりますし、直径もノギスで測れば、判別出来ます。ところが最近のバイオ弾は安価な物も含めて、この「直径」に関してはどれも優秀です。実際に計測しても、ほぼ公称値通りの精度が出ています。下記のデーターは「マルイ製バイオ弾」、「エクセル製バイオ弾」に加えて「弾詰まりしやすいバイオ弾」4種類を計測した結果です。計測方法は昔ながらの「ノギスを使い、ランダムに5箇所を計測する」という方法です。この方法はノギスさえあれば誰でも簡単に出来ますが、ランダムに5箇所を測るので計測精度も意外と侮れません。ちなみに当店では弾詰まりの危険性が低く安心してお勧め出来るバイオ弾として「マルイ製」、「エクセル製」を推奨しています。
<マルイ製バイオ弾0.2g>
5.96mm、5.95mm、5.95mm、5.96mm、5.95mm
<エクセル製バイオ弾0.2g>
5.91mm、5.93mm、5.94mm、5.92mm、5.91mm
<A社製バイオ弾0.2g>
5.94mm、5.93mm、5.94mm、5.93mm、5.93mm
<B社製バイオ弾0.2g>
5.92mm、5.92mm、5.92mm、5.93mm、5.93mm
<C社製バイオ弾0.2g>
5.95mm、5.95mm、5.96mm、5.95mm、5.96mm
<D社製バイオ弾0.2g>
5.95mm、5.95mm、5.94mm、5.94mm、5.94mm
このデーターを見ても分かる通り、どのバイオ弾も大幅に径が大きかったり、バラつきが大きかったりはしていません。寸法だけで判断すれば、むしろ非常に高精度なBB弾と言えます。
では何故、寸法精度は問題無いのに実際に使うと、弾詰まりが発生するのか?
私は「硬さ」が足りない事が理由と考えています。職業上、星の数程のBB弾をテストして来ましたが、一般的に「良く詰まるBB弾」と言われている物を調べると「柔らかい」という共通点があります。BB弾の硬い、柔らかい、と聞いてもピンと来ない方も多いと思いますが、ペンチで潰すとビックリする位、違いが明確に分かります。こればっかりは実際に経験してみないと分かりませんが、やってみると誰でもはっきりとした硬さの違いを感じ取れますので是非ともお試し下さい。一般的に弾詰まりの可能性が低いと言われているバイオ弾(マルイ製、エクセル製)に比べて、弾詰まりしやすいバイオ弾は明らかに柔らかく、少ない力で潰れます。バイオ弾は性質上、通常弾(プラ弾、セミバイオ弾)に比べて柔らかくなってしまうのは致し方ありませんが、その中でも「マルイ製」、「エクセル製」は硬い事がペンチで潰すと分かります。実際に弾詰まりする可能性も低い弾ですので、この2種類の硬さを基準にしておけばまず間違いは無いと思います。事あるごとに色々なバイオ弾をペンチで潰していると中には「これは紙粘土か?」と思う位、柔らかいバイオ弾もあります。このようなバイオ弾は最後まで潰しても割れずに「お餅」みたいになります。つい先日も新製品サンプルで送られてきたバイオ弾をテストしたところ、ペンチでつまんだだけで(まだ力を加える前に)パラパラパラっと粉々に砕けた物もありました。製造段階で「ラムネ」が混入してしまったのかも知れません。これはもしや歯でも砕けるのでは?と思い口に入れたところ、ホントに歯でも砕けました(笑)
硬い、柔らかいの差はあれど、バイオ弾は大抵、このように潰れます。
上手く撮影出来ず少々分かりづらいですが「お餅バイオ弾」です。
ちなみに通常弾(プラ弾、セミバイオ弾)はバイオ弾に比べて硬い為、この様に最後は粉々に砕けます。前述のラムネ弾との違いはこの状態になるまでには、かなりの力を加えないと割れません。
では何故、柔らかいBB弾は弾詰まりを起こす可能性が高いのか?私は「チャンバー」に運び込まれる過程で変形してしまうから、と考えています。意外と忘れがちですがBB弾って実は様々な箇所にブツかりながら&ど突かれながらチャンバーまで運ばれています。BB弾への攻撃は、BBローダーを使ってマガジン(ノーマルマガジン等のスプリング給弾式の場合)に装填する時点で既に始まっています。冷静に考えてみると当然の事ですがBBローダーはBB弾でBB弾を押し込んでいます。BB弾は球体の為、お互いの接触面は「点」接触になります。押し込んでいる時は予想以上の荷重が1点に集中して掛かっているはずです。更にマガジン側のスプリングテンションの反発力も加わりますので、柔らかいBB弾ですとこの段階で変形している可能性も十分考えられます。マガジンスプリングのテンションが強い場合は尚更です。
装填されたBB弾は今度はマガジンスプリングで押し上げられます。当然ですがこの時もBB弾とBB弾は点接触です。そして最上段のBB弾は飛び出さないように「BB弾ストッパー(リップ)」で止まります。皆さんも良くご存知のように、ストッパーは僅かにBB弾に引っ掛けて止めています。これってBB弾にしてみれば結構痛いと思うんですよね(笑)下からはスプリングテンションで押し上げられて、上からはストッパーのトンガッた角で押さえ付けられている訳で、まるで逃げ場の無い中間管理職です。たぶん私だったら心が折れますね…。さすがにBB弾の心は折れませんが、柔らかければ変形の1つや2つはするでしょう。BB弾への攻撃はまだ終わりません。ようやくチャンバーまで辿り着いても、今度はチャンバーの天井に押し付けられて最後は背後から不意打ちで、ノズルにど突かれます。このような過酷な攻撃を耐え抜いてようやくBB弾はチャンバーに装填され発射されるわけです。このような過程を考えると「柔らかいBB弾」が変形してしまう可能性は十分に有り得ると考えます。通常弾(プラ弾、セミバイオ弾)が全盛だった時代は「硬度」に関してはあまり重要視されていませんでした。通常弾は材料的な理由で、「硬度」は自然とクリアー出来る事が理由と思います。つまりこの頃は「BB弾は硬くて当たり前」だったんですね。ところがバイオ弾は色々な理由(材料的な問題、自然分解されるまでの時間の問題、等)で通常弾レベルの硬度は実現出来ていないのが現状です。「自然分解されるBB弾」という制約の中で可能な限りの硬度を実現する為に各BB弾メーカーは試行錯誤しているのではないでしょうか。更に言うと「硬度」は、製品単価に如実に反映されている、とも言えます。「マルイ製」、「エクセル製」のバイオ弾の1発当たりの単価が「安価なバイオ弾」よりも高いという事実は、逆説的に考えると「硬いバイオ弾を作るのにはコストが掛かる」という事なのかも知れませんね。環境意識の高い昨今、これからも引き続きバイオ弾が主流である事はまず間違いないでしょう。従来はあまり意識される事の無かった「BB弾の硬度」というものが、今後は重要視されて行くのではないか、と個人的には考えています。もしかすると何年後かには「ビッカース硬度」や「ロックウェル硬度」等の「硬度表記」がパッケージに表示されているかも知れませんね(笑)
バイオ弾によるトラブルが後を絶たない為、当店では現在、お客様へお渡ししております「カスタムカルテ」内に別紙で「BB弾に関してのお知らせ」を同封しております。尚、今回の内容はあくまでも当店の独断と偏見と過去の経験からのお話になります。弾詰まりする、しない、は銃本体との相性も密接に関係してきますし、私が知らないだけで「安いけど品質最高だぜ!」っていう素晴らしいバイオ弾も存在するのかも知れません。そのような事情も踏まえて参考程度にお読み頂けると幸いです。
KEN